僕は今日 リンゴの木を植える

思いついた物事とその記録

沈んでいく船の中で「この船はいつから沈み始めたんだったか」などと考える人はいるのだろうか。
 
沈み始めてからずいぶん時が経ったのかもしれない。ずっと前から船は、僕達が気づかないスピードでその巨体をズブズブと海に委ねていっていたのかもしれない。いや、もしかしたら沈み始めたのは最近なのかもしれない。それまでも船の調子はどこかおかしかったけれど、それがまさかこんなことに繋がるなんて、そう船長は思っているのかもしれない。
 
船長のいない、船長室で。
 
船が海に身体を委ね始めたのがいつからか、ではない。どちらであれ、船が沈んでいっていたのはずいぶん前からと考えていい。この船はみんなの始まりから、誕生から、その時からすでに沈む運命にあり、沈み始めていた。
 
誰もが生きたいと願った。みんな傾きとは逆の方向に走った。すると船はそちらの方向に傾いた。次はみんなで逆の方向に走った。すると今度は船がそちらの方向に傾いた。ひたすらにみんなでそれを繰り返した。ゲーム。いたちごっこ。暇潰し。時にみんなとは逆の方向に残って注目を集めようとした人がいたが、そんな人はいつも いつの間にかいなくなっていた。彼がいなくなったことを思い出す人はいない。彼女がいなくなったことを思い出す人も、いない。あんなに見ていたのに、笑っていたのに。ゲーム中の、暇つぶし。暇潰し中の暇潰し。みんなで極めた いたちごっこ。この上ない面白さの いたちごっこ。
 
そんな夢を、生まれてからずっと見ている。